都市型共創ファームによる社会変革とコミュニティ・モビライゼーション

――原宿はらっぱファームにおける「社会実験」の戦略的分析――

目次

1. はじめに(研究の背景と目的)

現代の都市部では、地域のつながりの希薄化や防災力の低下、食料自給率の低迷といった課題が顕在化している。本報告では、2025年4月に東京・原宿の国有地で始動した「原宿はらっぱファーム」を対象とする。
本事例は、10ヶ月という期間限定の「社会実験」でありながら、TV放映を含むメディア露出や継続的なSNSの投稿等により、最終的に8,000人を超える署名を集めるに至った。
本研究の目的は、この成功の要因を分析し、他のNPO活動への転用可能性と、コミュニティファーム特有の性質を明らかにすることである。

2. 方法(事例の概要と実施体制)

対象地: 渋谷区神宮前3丁目の国有地(約1,500㎡)。

実施期間: 2025年2月〜2026年1月(社会実験としての管理委託)。

運営主体: 都市農地と防災のための菜園協議会(NPO法人コンポスト東京等が協力)。

制度的枠組み: 「管理委託の再委託」という法的スキームを活用し、従来の借地が困難な国有地での暫定利用を実現した。

参加モデル(多層的設計):

    1. つながる畑: 8人1組のチーム制(パリ5区の手法に倣う)。

    2. 学びの畑: 初心者向けの教育プログラム。

    3. みんなの畑: 登録なしで誰でも立ち寄り、収穫体験ができる公園的スペース。

    4. 実験の畑: 企業資源(コーヒーかす、髪の毛、建築廃材等)を活用した循環型農業の検証

3. 結果(成果と認知拡大のプロセス)

コミュニティの多様性: 延べ約170名の実質的メンバーが活動し、インフルエンサーから近隣の企業(芸能事務所、アパレル、美容室など)、地元住民、学生まで多様な層が「土の上では肩書きなく」交流した。

産業代謝(サーキュラーエコノミー)の実現: 近隣のスターバックス等から毎週10kgのコーヒーかすを回収し、美容室の廃棄毛をマルチとして利用するなど、地域の未利用資源を循環させた。

メディア戦略と認知拡大: 「原宿のど真ん中に畑」という視覚的インパクトに加え、継続的な運営からのSNS配信や青山学院大学の学生プロボノによるSNS発信が、若年層へのライフスタイルとしての気づきにつながっていることや、イベントを繰り返し、イベントごとに関わる関係人口が増加する中で、渋谷区、企業、住民、学生の産官学のつながり、廃棄物を堆肥に変え、土に返し、その土の養分から新しい野菜を実らせ、いただく、関わるステークホルダーとわかりやすい循環がBS朝日「つながる絵本」等のTV取材までにつながったと考えられる。

署名運動の拡大: 閉園が近づくにつれ、実体験に基づく「場所への愛着(プレイス・アタッチメント)」が署名活動へと昇華し、開始当初は、数人から始まったプロジェクトは、10か月のうちに、関わる人が延べ数170名を超え、署名にいたっては8,352筆の賛同(※2026年1月8日時点)を集めた。残念ながら継続には至っていないが、関係人口の増加からSNSでの周知により、一つのNPO運営の取り組みが広まった好事例ではないかと考える。

4. 考察(成功要因の分析と示唆)

「期間限定(一時性)」のレバレッジ: 期間を限定することで行政の承認ハードルを下げると同時に、支援者の「今守らなければ」という緊急性と当事者意識を醸成した。

多角的なリフレーミング: 単なる農作業ではなく「防災拠点」「環境教育」「ウェルビーイング」と多義的に定義したことで、多様なステークホルダーの参画障壁を下げた。

アカデミック・シビック共生: 大学の「サーバント・リーダー」教育プログラムと連携し、知的正当性と安定した労働力(学生プロボノ)を確保する手法は非常に有効である。

企業の課題解決パートナー化: 寄付を仰ぐのではなく、企業の廃棄物(コーヒーかす等)の解決策(R&D)を提供することで、ビジネスとしての持続性を高めた。

4.2 コミュニティファーム特有の性質(留意点)

「土」という根源的なメディア: 土に触れる、収穫を分かち合うといった感覚的・根源的な体験は、言語や論理を超えた共感を生む強力な装置である。

視覚的な循環の分かりやすさ: 生ごみが土に還り、野菜になるプロセスは、SDGsの理念を最も直感的に可視化できるため、メディアが物語化しやすい。

5. 結論

原宿はらっぱファームの成功は、国有地の暫定利用という「制度の隙間」を「社会実験」として捉え直し、原宿という都市の象徴性を活用した高度なナラティブ設計によるものである。このモデルは、都市の「未利用地」や「廃棄物」という負の遺産を、市民共創の種床へと変換させるための有効な知見を提供している

本事例の構造は、荒地に蒔かれた「タンポポの綿毛」のように、一度その場所で成功の証明(Proof of Concept)がなされれば、その種(知見や愛着)は関わった人々の心を通じて別の場所へと広がり、新たなコミュニティの花を咲かせる力を持っていると思います。

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